まぼろしパンティ・Unforgiven・「閃光盗撮団の森」/中円寺・著





 N県に在る進学校、クライム学園。
 アウシュビッツオペレーションと呼ばれた最悪の仕置き刑が発動された翌日から、まぼろしパンティは姿を現さなくなった。その為クライム学園が元のような犯罪多発学園へと戻ってしまう迄に長い時間は必要無かった。学園警察は既に撤収していた為、学園内は無法地帯の様な有り様になってしまった。
 だが待望論が巻き起こる中まぼろしパンティが復活した。
 何故姿を見せなくなっていたのかは生徒達の知らぬところだったが、華麗に復活するや否やまぼろしパンティは瞬く間に学園内の全ての軽犯罪を解決に導いてしまった。
 事件を解決する手腕は復活以前よりも一層鮮やかであり、その容姿の美しさは更に磨きがかかり益々セクシーであるという噂があちらこちらに流れ始めていた

 しかし、まぼろしパンティの復活も犯罪防止の特効薬とまではならなかった。犯罪解決迄の時間は大幅に短縮されていたが、学園警察がいない分、犯罪者への
罰則という点で甘さが出ていることもあり、犯罪発生率は横這いのままだった。
 そんなイタチごっこの様な状況の中ある事件が起きた。
 下校途中の女子生徒が、数人組の不審人物にスカートの中を盗撮されたというのだ。
2,3日の間隔で事件は起こり、既に被害者の数は5人に上っている。部活動等で帰宅が遅れ、一人で下校していた生徒ばかりが被害にあっていた。
 不審人物達は各々カメラを持ち、地面を転がりながら、奇声を発しフラッシュを焚きあっという間に去って行ってしまうらしかった。奇声というのは「…フラーッシュ」と言っているようだが、はっきりとは判らないというのが被害者の一致した証言だった。

 半年前迄常駐していた学園警察署長の一人娘、藤寿々美は被害者の女生徒達からさりげなく話を聞きだしていた。話を総合すると、不審人物の数は4人から5人、顔は殆どの被害者が「見た筈だけど覚えていない、思い出したくない」と云うばかりで犯人の目星はつきそうもなかった。
 寿々美は、昼休みに一人考え込んでいた
(思い出したくないというのはどういうことかしら、何か催眠術のような術か、もしくはよっぽどのショックを受けたか……)
寿々美の思い悩む姿は、進路に悩んでいるようにも、恋に悩んでるようにも見えた。
クライム学園No.1とも噂される程の容姿の寿々美である、悩む姿さえ可憐であった。寿々美が学園犯罪を一人で解決している半裸の少女探偵まぼろしパンティあることを知る者は、今この学園の中には誰もいなかった。
(やはりここは、囮捜査しか無いみたいね)
寿々美は決意を固めると、意識を切り替え授業の予習を始めるのだった。

 下校時刻は既に過ぎ、日もすっかり暮れてしまい校舎は闇に包まれている。
 寿々美は、1人女子寮まで歩いていた。学校から女子寮までは歩いて10分程の山道を歩いて帰らねばならない。電灯も殆ど無いので、月明かりだけが頼りである。犯罪が起きるのも不思議は無い、むしろ起きて当然な環境といえた。
 周囲に充分注意を払いながら、それでいて自然に寿々美は歩いている。
いくら捜査の為とはいえ自分の下着を盗撮団に撮られるつもりは全く無い、5感を働かせ、これから現れるであろう変質者達への警戒を怠らず歩いていた。
 女子寮までの道程の半ば迄来た時、寿々美は周囲の木々が微かにざわめくのを感じた。その直後、黒い塊が2つ足元に転がり出て来た。
「……メン フラーッシュ」
2つの黒塊はそう叫びながらフラッシュを焚いた。寿々美はすかさずスカートを両手で押さえ、スカートの中身をガードし、わざと悲鳴をあげた。
 フラッシュが焚かれると同時に背後から3つの黒い塊が、これまた回転しながら、足元を掠め前方に交叉するように飛び出してきた。
「チ……フラーッシュ」
この3黒塊も奇妙な叫びを発しながら転がってきた。今度の攻撃も寿々美はガードしたがさすがに全ては守りきれていないかもしれなかった。

「助けてぇ、変態よ」
寿々美は叫びながら走り出した。地面を転がってた連中に動揺が走る。
「俺、撮れてないぞ」
「僕も」
そんな囁き合いが寿々美の耳に聴こえてきた、どうするか判断出来ず右往左往している空気が伝わってくる。寿々美は足を縺れさせ、わざと転んだ。それを見た盗撮団は途端に色めき立ち
「チャンスだ」
「追いかけろ」
などと言って寿々美を追いかけてきた。既に両者の間にはかなりの距離ができてしまっていたので、寿々美はすかさず森の中に飛び込んだ。
 盗撮魔達が駆け寄ってきた時には、寿々美の姿は木々と闇に紛れて見当たらなかった。

「まだ、その辺にいる筈だ、探せ」
「今の、藤寿々美じゃなかった?」
「ミス・クライム学園って言われている?」
「ああ、確かに藤だったかも」
「何い、くそう、絶対撮ってやる。追いかけろ」
盗撮団は逃した獲物の大きさを悔やみながら、慌てて寿々美の後を追い森の中に飛び込んだ。
 森の中と言っても木と木の間は充分な間隔があいており、走り抜けることに問題は無かった。しかし樹木に遮られて月明かりも届かない為、視界が悪く、不気味な雰囲気も漂いだしてきて5人の盗撮魔は腰が引けたような体勢で一塊になってもたもたと追跡している。
「出て来〜い」
「逃げられると思ってんのか〜」
などと威勢のいい台詞を吐く5人だったが、今にも震えだしそうになっていた。

 しばらくすると5人の前が開けた。木々が生えてなく、自然に出来た広場のような場所に出たらしかった。そこにだけ月の光が差し込み、ようやく5人が一息ついたその時、どこからか歌声が聞こえてきた。
「何だ、この歌は」
「まさか、例の…」
5人は顔を見合わせる。歌が終わりを告げると共に高らかな声が響き渡った。
「女生徒のスカートの中を集団で無理矢理写真に撮ろうとする破廉恥で卑劣な行為、正義の名の元に許すわけにはいかない!」
凛々しい声が響き渡ると同時に、樹上から5人の前に1つの影が飛び降りた。影はすっくと伸び5人を睨みつける。
「犯罪学園クライムに光を灯す正義の使者、まぼろしパンティ只今参上」
 月明かりを浴び、その姿が露になる。パンティをマスク代わりに被り、下半身もパンティ一枚のセミヌードといっていいコスチューム。すらりと伸びた手足は真紅のロングブーツとロンググローブに包まれている。首に巻いた赤いマフラーが風になびき陽炎のようだった。豊かに盛り上がった胸、深くくびれたウエスト、しっかりと張り出したヒップ。どこから見ても非の打ち所の無い肉体が月光の中輝いていた。

「とうとう出たな、まぼろしパンティ」
5人の内のリーダー格の男が興奮を隠せぬままそう言うと、5人は一斉にカメラを構え、顔を隠した。
「顔を隠しても無駄よ、貴方達の正体はもう分かっているんだから。貴方達の正体は、その顔を見た者が恥ずかしくなってしまう程の不細工面集団、成績劣悪で何度も留年を繰り返している万年3年生、3年痴面組よ!」
まぼろしパンティは5人を指差し彼らの正体を看破した。
「ばれちまっちゃあ仕方がない」
「人の顔を恥ずかしい顔だとか言いやがって」
「今度はお前のその恥ずかしい格好を撮ってやるぜ」
5人はカメラを構えたまま開き直ったかのような態度で、まぼろしパンティに挑みかかってくる。まぼろしパンティも怯んだ様子を見せずに応じる。
「写真に撮りたければ撮るがいいわ。けれどこれは正義の為のコスチューム。写真に撮られたぐらいで恥ずかしがると思ったら大間違いよ」
そう啖呵を切り、まるで決めポーズのような格好で5人に対峙した。


 まぼろしパンティがそう言うや否や、5人のカメラのフラッシュが一斉に焚かれた。
連続して焚かれるフラッシュはまるで光の洪水のようだった。まぼろしパンティはあまりの眩しさに眼を細めたが、身体を隠すような素振りは一際見せず、むしろ5人に見せつけるようにその美しい身体を押し出していった。
 フラッシュが次第に収まってくると、まぼろしパンティは一歩踏み出した。
「今度はこちらの番よ。いくら全く女性に相手にされないからといってスカートの中を写真に撮って良い訳が無い。変態不細工5人組、覚悟なさい」
まぼろしパンティがそう宣言した後、一拍間が空いてから、5人は突然笑い出した。
「ひぃーっひっひ」「げはははは」「あひゃひゃひゃひゃ」「ぷくくく」「だしゃしゃしゃ」
まるで気が狂ったかのような笑い声に、まぼろしパンティも虚をつかれてしまった。
「な、なにがおかしいっていうの」
戸惑いながら怒気を含めてまぼろしパンティが言う。その視線の先にはカメラを下ろした不細工顔が5つ並んでいた。

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「ひぃーっひ、これを見てみな」
リーダー格の眉毛の無い男が、写真の束をまぼろしパンティに向かって投げた。
 まぼろしパンティは汚らわしい物を触るかのような手付きでそれを拾い上げ、横目でチラリと眺めた。そこには女生徒のスカートの中が写っていた。まぼろしパンティは一瞥した後すぐに写真の束を相手に向ける。
「見るまでもなかったけど、これこそ貴方達が連続盗撮事件の犯人である証拠。警察に突き出してあげるわ」
そう言われた盗撮団だが、悪びれもせず薄ら笑いを浮かべ忠告めいた言葉を発した。
「そう言わずに、もっとしっかり写真を見てみろよ。写って無い筈のものが写ってたりするかもしれないぜ」
その自信に溢れた言葉を怪訝に思ったまぼろしパンティはもう一度写真に眼をやった。幸い月は満月に近く、充分な明かりが降り注いでいる。何が写っているかの確認は充分出来た。
「こ、これは」
何枚か写真をめくっていたまぼろしパンティの手が止まり、表情が凍り付いた。

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「気付いてもらえたかな、俺達の努力の成果」
やらしく笑う5人組は自慢げだった。
 まぼろしパンティが手にしている写真は全てがローアングルから女生徒のスカートの中を狙った物だった。一瞬見ただけではハッキリしないが、ようく意識して見るとその写真の意味が判ってくる。臀部側から写した物ではそれでもまだハッキリとはしないが、前から写した物をを見ればまさに一目瞭然だった。そこには本来
写る筈の無いものが写ってしまっていた。純白と思われるパンティを透かして、女生徒のアンダーヘアがしっかりと写っているのだ。それもほんのり透けているといったレベルではなく、生えている向きなど、一本一本の毛の流れまで分かるほどの鮮明さだった。
 思考停止に陥ってしまったかのように、まぼろしパンティは写真を持ったまま固まってしまっていた。そこに変態5人の声が掛かる。
「写真の重大さが判ってもらえたかい」
「俺達が研究して作り上げた透視カメラによる傑作の数々はどうですか」
まぼろしパンティが僅かに反応をみせる。
「と、透視カメラ……」
受け入れたくない事実に耳を塞ぐような囁きだった。

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「そう、赤外線を利用したカメラさ、研究に研究を重ね、改良に改良を加えてここまで撮れるようになったんだぜ」
「薄い布ならご覧の通りの結果さ」
「そして、俺達が今持ってるカメラも、その透視カメラってわけだ」
男達は楽しそうに笑いあう。
「いやあ、さっきは一杯アンタの写真を撮らさせてもらっちゃったなぁ、まぼろしパンティさん」
「早く現像したいなあ」
「どんな写真が撮れてると思う」
「そりゃあ、まぼろしパンティがポーズを決めて格好良く立ってる写真にきまってるさ」
「パンティ透け透けで」
「アソコもバッチリ」
「正体バッチリ」
痴面組は勝利に酔うようにゲヘヘヘと馬鹿笑いを繰り返した。

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「さあてさっさと帰りますか」
「明日にむけて壁新聞でも作っちゃう?」
「『ついにまぼろしパンティの正体判明!』」
「『あんな恥ずかしい格好で飛び回っていたのは実は!』」
「そして恥ずかしい写真がバーン!」
更にゲヘへと笑う5人。するとまぼろしパンティがやっと声を発した。
「そ、そんな事が許されると思ってるの」
「許されるも何も、なあ」
「俺達が撮った写真だし」
「肖像権なんて関係ねえし」
見るのも恥ずかしい顔を歪ませ変態達はニヤニヤ笑っている。
「ぼ、没収よ、そんな風紀を乱すようなもの、没収するわ」
そう叫びまぼろしパンティは痴面組に向かって奇襲をかけた。リーダーと思しき眉無しに向かって飛び掛る

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「フライング・ボイン・アターック!」
全体重を乗せ、スピ−ド溢れる攻撃が繰り出された。高さのある跳躍から、手足を広げリ−ダーにぶつかっていく。その途端、その他の痴面組のメンバーのカメラが光を放った。様々な角度からの光がまぼろしパンティの完璧な肉体を夜の闇に浮き上がらせる。その光の意味するところに気付き、まぼろしパンティは慌てて手足を縮めた。バランスが崩れ攻撃は不発に終わり、まぼろしパンティは無様に地面に落下してしまった。
「またまた撮れちゃったぞ」
「さっきより良いのが撮れたでしょ」
「俺なんか物凄い角度から撮っちゃったぜ」
嬉しそうに報告する4人、中には股間の方からの撮影に成功した者もいるようだった。してやったりという表情でリーダーがまぼろしパンティを見下ろした。
「そ、そのカメラを渡しなさい」
まぼろしパンティは必死の形相で男達に命令する。しかし今や立場の差はハッキリとついてしまっていた。痴面組の5人は余裕の表情を浮かべ、片やまぼろしパンティには全く余裕が無くなってしまっていた。

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「渡すわけ無いじゃん」
「このカメラ作るのに、どれだけの時間と金が掛かったと思ってんのさ」
当然、男共は命令なぞ聞くわけが無い。まぼろしパンティも何とか力ずくでカメラを奪おうとする。明らかに5人の変態は運動は不得手そうだった。束になって掛かって来られても返り打ちにするのは容易そうであったし、逃げられても追いかければ簡単に追いつけることは間違いなかった。不意に立ち上がり、一番傍に立っていた眉毛の太い男に技を見舞った。
「太腿シザース!」
叫びながら両方の腿を使って相手の喉元を締め付けようと飛び上がる。その攻撃はすっかり5人に読まれていた。機を逃さず、先程と同様四方からフラッシュがまぼろしパンティを襲った。またしても技は不発に終わり、地に塗れるまぼろしパンティ。
「いやあ今度のはすごいなあ」
「おっぴろげですよ、おっぴろげ」
「丸見えでしょ、これは」
「ありがとさん、まぼろしパンティ」
5人は今にも踊りだしそうな程の浮かれぶりである。

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 まぼろしパンティは倒れこんだ姿勢のまま痴面組の5人を見上げた。そこに浮かぶ表情は先程までの凛々しさとは正反対と言っても良いくらい狼狽している。
「あ,あ……」
口からは言葉にならぬ焦りばかりが飛び出すばかり。
「いひひ、それじゃあ今度こそ、な」
「帰って現像大会といきますか」
「いっときますか」
浮かれムードのまま5人は帰ろうとし始める。
「ひっ」
まぼろしパンティは慌てるばかりで立ち上がれない。と、その時、リーダーの眉無し男が、まぼろしパンティに向き直った。
「最後に、もう一つだけ教えてやるよ。このカメラの実用性がはっきりした頃から、標的はまぼろしパンティって決定してたんだ。パンティ1枚被ってるだけなんて、絶好のカモじゃんって話になってさ。だから今回の盗撮事件も、元を辿るとアンタをおびき出す為の罠だったてわけ。分かってもらえた?ひひひひ」
そう言い捨てると、5人は帰路につこうとした。

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「ま、待って」
まぼろしパンティが声を上げ、5人は揃って振り返った。
「どうしたのかな、まぼろしパンティさん」
「僕ちゃん達みたいな不細工集団にまだ何か御用でも?」
ふざけた態度の5人の目に映るのは、怯えた表情で固まっているまぼろしパンティだった。
「……そ、その写真を現像しないで」
やっとのことで搾り出した声には全く力が無い。
「どうしちゃったの、まぼろしちゃん」
「俺達、卑劣な盗撮魔だぜ」
「そんな事言われて聞く訳無いじゃん」
「分かってないなあ、パンティちゃん」
去りかけていた痴面組が再びまぼろしパンティの前に集まってくる。
「そ、それだけは、その写真だけは現像しちゃ駄目なの……」
「駄目なのってなあ」
「そりゃあ、現像したらアンタの正体丸判りだもん、駄目だわなあ」
「でも、それが目的でやってんだからさ、しょうがないじゃん」
「それでもやめてほしいってんなら、それなりの見返りが必要だよなあ」
図に乗る5人、そして怯えるまぼろしパンティ。

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「わ、分かったわ、今回貴方達が犯した罪については私の胸の中にだけしまっておく事にするから、フィルムをこっちに渡して」
まぼろしパンティがそう言うや否や、痴面組から嘲笑や罵声が浴びせられた。
「馬〜鹿、何だそれ」
「アンタから条件出せるわけないだろう」
「警察に黙ってるなんて当然じゃん」
「こっちは、お前の正体握ってるっつーの」
「考えて喋ろうぜ、まぼろしちゃん」
一通り言いたい事を言いすっきりした5人は、顔を見合わせ意思確認をした後、リーダーの眉無しに託した。
「という訳で、アンタも分かったと思うけど、切り札はこっちにあり、アンタに逆らう余地は無い。理解してもらえた?」
「あ、貴方達の言いなりになる訳が無いでしょう」
「まだそんな事言ってんの。言いなりになるしか道は残って無いんだって」
カメラをプラプラさせる5人組。まぼろしパンティは俯き口唇を噛み締める。その様子を痴面組はうすら笑いを浮かべ眺めている。

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 ゆっくり顔を上げ、口を開くまぼろしパンティ。
「……い、言うことを聞けば、フィルムは返して貰えるの」
「それはアンタの心掛け次第だな」
「アンタの態度が気に食わなかった場合は返せないだろうな」
「選択肢があるとすれば、このまま俺達を放っておいて、明日お前の正体大公開といくのを待つか」
「俺達の言う事を聞いて、フィルムを返して貰える可能性にかけるか、2つに1つ」
「言う事聞かなきゃ大公開は決定事項だから、よろしく」
「……ず、ずる…」
まぼろしパンティが口惜しげに何か呟いた。
「あ〜ん、何だって?」
「今、ずるいとか言わなかったか」
「これは俺達が努力の末に手に入れた当然の権利だっての」
「醜男に生まれついたハンデに立ち向かった結晶じゃないか」
「帰りたければ帰りな。フィルムを返してほしかったら、そこに立てよ」
散々勝手なことを言い捨てた後、リーダーがまぼろしパンティに条件を出した。

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 立つように示された場所は、月光が降り注ぐ光量充分なポイントである。月明かりに照らされた静寂の中、まぼろしパンティは拳を握り締め立ち尽くしていた。
 5人は息を潜め、贅沢な獲物の動静を狡猾そうに見守っている。
 長い沈黙の後、10の濁った瞳が見つめる前を、ゆっくりとまぼろしパンティが動き始めた。月の光の中へ。
 痴面組の顔が益々不気味に歪み、見るに耐えない笑顔となった。
「そうですか、そうですか。そんなにも正体大公開は嫌ですか」
「まあ、それが賢い選択だと思いますよ、これからの人生を考えたら」
戯れ言に付き合いきれず、まぼろしパンティが男達を睨みつける。
「こ、ここに立って何をすれば良いの」
その声には未だ誇りを失っていない高貴な響きが残っていた。
「いい根性だね、じゃあまず気を付けの姿勢をとってもらおうか」
まぼろしパンティの強気を面白がるかのように、最初の指示が出された。
 まぼろしパンティが言われた通りの姿勢をとる。すぐさま5つのカメラから花火のように光が飛び出した。

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 この光の中にまぼろしパンティのコスチュームで立つということは、オールヌードの写真を撮られているのと同様、いや、それどころでは無い痴態を晒すことを意味していた。堪らずまぼろしパンティは上下のパンティを手で押さえ身を捩った。
「おい、駄目だろそれじゃ、ピシっと立てよ」
「さっきみたいに格好つけてみろ」
不細工5人が命令形で喋る。まぼろしパンティは逆らいきれず、ゆっくりと直立姿勢をとるしかない。フラッシュは絶え間なく光り、まぼろしパンティを蝕みつづける。そして痴面組は徐々にまぼろしパンティに近づいていく。まぼろしパンティがフラッシュと不細工顔に圧迫感を覚え後ずさりしようとした時、更なる命令が飛んだ。
「じゃあ、次はパンティ脱いでみようか」
「ぅっ」
まぼろしパンティに動揺が走る。男達の要求は当然の事であり、ここにこうして立つということに漏れなく付いてくる命令であることは理解していた筈だった。だが、圧倒的なまでのフラッシュを浴び、レンズの前に立つことに恐怖すら感じ始めているまぼろしパンティにとって、この要求はとても重かった。

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「上のでも下のでも、どっちでもいいよ」
そう言われても、マスクパンティを脱ぐ訳にはいかない。マスクだけは死守せねばならないからこそ、今ここに立っているのだから。
「ほれほれ、どうせこのカメラで撮られちゃえば一緒なんだから、とっとと脱ぐ脱ぐ」
そう言ってる声の調子は、とても、どちらでも構わないと思っているようには聞こえず、焦りと興奮の色がハッキリと浮いていた。だが、まぼろしパンティも落ち着きを無くし、そんな微妙な声音の変化には気付いていない。
 説得されたかのようにまぼろしパンティの手がそのセクシーなパンティに掛かった。純白のハイレグパンティ、縁は目の細かいレースに飾られ、サイドの部分は紐で結ぶようになっている。その紐を片方ずつ丁寧に解き始める。まるでゆっくり解いていれば応援がどこからか現れるのではないかと期待しているかの様に。だが、そんな救いの手は今回は差し伸べられそうも無かった。
 片方の紐が解き終わり、布地の端がはらりと垂れ下がる。満面の笑みを浮かべている男達。まぼろしパンティは眼を瞑りながら、もう片方のサイドを解き始める。夜の森の中、紐が解かれていく音と、そこに居る全ての人間の息遣いだけが強調されていた。

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 紐が解き終われば、自然にパンティは落下してしまう。まぼろしパンティは咄嗟にフロント部分の布地を左手で押さえた。5人の変態から溜息のような吐息が漏れる。
「なに押さえてんだ、手を放すんだよ」
「手は身体の横に置きな」
偉そうな声が、まぼろしパンティの耳に届く。今はまだ、痴面組の5人の肉眼にパンティの下を見せている訳ではない、フィルムを現像さえされなければ彼等が見ているのは、普段のまぼろしパンティのコスチュームでしかない。だが、恐らく確実にフィルムには、両方のパンティの中身が明瞭に写っているだろう。そんな写真を公表される事だけは避けなければならない。だがどうすれば良いか妙案は全く浮かばない。彼等に逆らえる状況でもなかった。手に込めた力が抜けていき、遂にパンティが手からこぼれた。前後に開き、力尽きた蝶の様に落下していくパンティ。そしてまぼろしパンティの両手がゆっくり身体の横の線に沿う。今まで以上にフラッシュが次々に焚れた。
 痴面組は、初めて生で目にする女性の秘密の場所に、興奮を押さえきれず、荒い呼吸でシャッターを切り続ける。ファインダーから覗けるのは、まぼろしパンティのピッチリと閉じた太腿と、その間に生えているアンダーヘアだった。それだけで彼等は充分興奮出来た。その生え具合を目にすることが出来ただけでも感動的であった。

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 そのアンダーヘアは彼等自身の陰毛と比較して縮れも無く、量も少なかった。透撮した他の女生徒達と比べても、整った生え具合であり、まるで高級な毛皮のようで、それだけで美しいと感じさせる程だった。
「なんか黒いモノが見えてますよ、まぼろしちゃん」
「もっとボウボウかと思ったけど、意外と少ないんだな」
「やっぱりお手入れしてんのか、際どいパンティに備えて」
5人の揶揄する声が、まぼろしパンティの耳に届く。
「ああ」
絶望の溜息が漏れてしまう。遂に見せてはいけない所をこんな不細工5人に見せてしまった、その絶望感が吐かせた溜め息だった。
 痴面組はまぼろしパンティの秘部に焦点を合わせたまま、じわじわその距離を詰めていく。
「しっかり眼を開けてカメラの方を見るんだ」
そう言われ逆らえずに顔を上げるまぼろしパンティ。その瞳は心なしか潤んでさえいるようであった。

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痴面組の一人が、地面に落ちたパンティ目敏く見つけを奪い取った。
「あっ」
大切な拠り所を奪われ益々まぼろしパンティは動揺する。
「いひひ、コイツは頂いておきますよ、収穫収穫」
嬉しそうにパンティを頬に摺り寄せるのは、歯が剥き出しな不細工男だった。
「それじゃあ、足を広げていってもらおうかな」
リーダー眉無しが興奮しながら言った。
 既にまぼろしパンティの足元にカメラが列になって並んでいる。月明かりの中でも、まぼろしパンティの顔が紅潮しているのが判る。長い逡巡の後、諦めたかのようにまぼろしパンティの長く伸びた足が広がっていく。摺り足でブーツが地面と擦れる音が響き、その音と共に足が作る角度が大きくなっていく。
 すらりとしながらも肉感的な太腿が60度程迄開いたところでまぼろしパンティは限界がきたかのように動きを止めた。露になったその腿の付け根に
カメラから発せられる光は絶えまなく注がれ続ける。5人組はかなりのローアングルから見上げるようにして一点に集中してシャッターを切っていた。

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 大量の光を浴びているその部位は、まぼろしパンティの見事に成熟した肉体とは対称的に清純な趣きだった。淡いアンダーヘアは、聖なる割れ目を覆う迄には到らず、その上端にかかる程しか生えていない。その所為もあり、下から見上げられると割れ目の様子は丸判りとなってしまっていた。色素沈着の殆ど無い聖裂はぴたりと閉じ合わさり、まさに1本の清らかな肉筋だった。
「うひょー、割れ目だよ、割れ目」
「すげえ、丸見えだ」
「生きてて良かった」
「どうなんですか、このオマ☆コは?」
「うーん、意外と使い込んでないようですね、げへへへ」
興奮がどんどん高まっていく5人組。実物を見るのは初めての癖にいかにも詳しげに品評を加える不細工までいた。
「うう」
まぼろしパンティの口元が悔しさと恥ずかしさで歪む。本当なら、こんな変態共に見せるはずが無い場所なのだ。

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「よ、よおし。それじゃあ広げろ」
リーダーが興奮の余り吃りながら言った。
「えっ」
強すぎる羞恥で思考が麻痺状態のまぼろしパンティは一瞬相手が何を言っているのか判らなかった。
「え、じゃないよ。アンタのその割れ目を、自分の指で広げて見せろって言ってんの」
「そ、そんな……」
「そんなこと出来ませんか?」
「出来ないならそれで良いけど、こっちも現像はさせてもらうよ」
「で、その写真は公表するぜ」
「どっちがより重要なのかはアンタが決めれば良いさ」
すっかり圧倒的優位なポジションに立った痴面組は、確実にまぼろしパンティの弱味に付け込み、自分達の欲望を成就させようとしていた。

28
「うぅ……」
苦悩するまぼろしパンティ。今の状態でも充分屈辱的なのに、この上更にその奥まで披露せねばならないのか、そこまでしたとしても、写真が公表されない保証は全く無く、この先ずっとこの変態共の命令を聞きつづけねばならない可能性は充分過ぎるほどあった。そうではあるけれども、何としても写真の公開だけは避けなければならない。自分が足を踏み入れた底無し沼のあまりの深さに打ちのめされるまぼろしパンティであった。
「さあ、どうすんの、まぼろしちゃん」
「さっさと決めなよ、パンティちゃん」
「早くしなきゃ、それだけで写真公開の対象にしちゃうよ」
5人組の催促が飛ぶ。
 まぼろしパンティはカメラから顔を逸らし、目を瞑った。口元はきつく引き締まっている。再び訪れた長い沈黙の後、まぼろしパンティの両腕が身体の前面に向けゆっくりと動き始めた。スラリと伸びた腕が、まぼろしパンティの秘部を隠す様に重なり合う。真紅のグローブに包まれた手によってすっかりと聖なる割れ目は覆い隠された。

29
 5つのカメラがその瞬間を逃さないように微動だにせず狙い定めている。男達の欲望の強さと、彼等が握っている秘密の重大さがまぼろしパンティに逆らう力を奪いつつあった。
 真っ赤な指先が聖裂を挟むようにきちんと並んだ。その指先はかすかに震えている。指先に力が込められ、柔らかそうな肉唇に圧力の加わる様子が、カメラ越しに5人にも分かった。揃えて唾を飲み込む痴面組の男達。スローモーションの様にゆっくりと陰唇が割れてゆき、その内部に隠されていた鮮紅色がカメラの前に現れ始める。フラッシュが物凄い勢いで焚かれていき、シャッター音は鳥の羽音のように空気を震わせた。
「ああ……」
悲鳴にも似た声がまぼろしパンティの口を衝く。自分自身でもしっかりと見た事は無い場所を、こんな下等な男達に披露せねばならないとは。サタンの足の爪の罠に嵌ったあの事件の後、まぼろしパンティは強くなる為に様々な特訓を積んだ。体力面を強化し、必殺技に磨きをかけたし、より魅力的な身体を手に入れる為に必要と思われる事には何でも挑戦した。羞恥心こそが自分の最大の弱点だと考え、けっこう仮面に近づけるようマインドトレーニングも積極的に行った。そういった努力がこの様に裏目に出てしまうとは思いもしなかった。

30
 薄紅色の肉の谷間へ、フラッシュの光が次々と吸い込まれていき、まぼろしパンティの秘密の場所がフィルムに写し撮られていく。ほんの数cmしかない
場所であったが、そここそが痴面な男達が人生の全てを賭けても眼にしようとした場所であった。生で女性生殖器を見たことの無い5人組ではあったが、そのたたずまいの端麗さがおそらく貴重なものであろうことは感覚的に理解出来た。谷間を縁取る肉唇は左右対称で、捩れなどは全く見られていない。その肉唇に囲まれた内側はグローブに負けない程の鮮やかな紅色を発しており、血色の良さをうかがわせた。噂話や偶々手に入ったアダルトな雑誌の記事などから仕入れた知識を総合し、その場所はどぎつく、グロテスクなのではないかという結論に達していた5人にしてみれば、まぼろしパンティのソコは想像を遥かに上回る神秘的な魅力を湛えていた。
「うひひ、まぼろしパンティのアソコだよ」
「パンティの中はこんなになっていたんですねえ」
「い、意外と綺麗じゃないか」
興奮と感動と征服感がぐちゃ混ぜになっている男達は様々な感情を爆発させながら、まぼろしパンティの秘裂について思う様を誰とも無く語っていた。

31
「ああぁ……」
まぼろしパンティは再び顔を背け眼を瞑った。数え切れないフラッシュが自分の最も恥ずかしい場所を照らし続けている。眼を瞑ったのは眩しかったから
だけではなかった。それまでの体験には無かった羞恥がまぼろしパンティを襲っていた。
 どれくらい光の渦に曝されていただろうか、まぼろしパンティが時間の感覚を無くしそうになるほどの濃密な時が流れ、漸くシャッターの音が止み始めた。シャッターからシャッターまでの間隔が出来始め、その間隔が徐々に伸びていった。
「さて、まぼろしパンティさん」
長い静寂が生まれた後、眉無しリーダーが口を開いた。
「実際のところ、アンタがさっき言ってくれたよう我等痴面組は他人が恥ずかしくなるほどの不細工集団さ」
リーダーのその言葉に他の4人が一斉に頷く。まぼろしパンティは既に眼を開けて何を始めるつもりなのか警戒していた。リーダーは続ける
「そんな我々だから、当然異性には縁が無い。したがって女性の裸など見たことは無い。ましてや女性の陰部など見たことがある筈も無い」
激しく肯く他の4人。

32
「だが耳学問でその場所に色々名前がついてることは知っている。そこでだ、この機会に詳しく知っておこうと思うのだ。ひょっとしたらこれが最後の機会かもしれないからな」
うすら笑いを浮かべまた肯く4人。その言わんとするところを察し凍りつくまぼろしパンティ。
わざとらしいほどの丁寧な口調でリーダーが言う。
「まぼろしパンティ先生という素晴らしい指導者にも巡り逢えた訳ですし、ここは是非、先生自らによる詳細な講義をお願いしますよ」
「な、何を……」
「今、貴方が広げている部分の詳しい解説ですよ」
「……」
「嫌ですか?なら辞退して頂いても構わないですけどね。」
「……」
「どうします?」
まぼろしパンティは、視線を逸らし黙り込んでいる。

33
「それ程嫌ではないってことですか?ではこちらから尋ねていきましょう」
ほくそ笑みながら顔を見合わせる5人。
「まず、今まぼろしパンティ先生の指が広げている所は何という名前がついてるんですか?」
眉無しリーダーが嘘臭い真面目声で質問した。
「……」
沈黙のまぼろしパンティ
「知らないってのは無しですよ、まぼろし先生」
「なんだったら、普段先生が呼んでる名前でもいいですよ」
「……」
「さあ、教えてくださいよ、パンティ先生」
まぼろしパンティは、唇を震わせながらその名を口にする
「…だ、大陰唇…です」
その声は夜風に紛れそうなほど微かだった
「ええ、何ですか、聴こえませんでしたよ」
「だ、大陰唇よ」
必死になって声を上げるまぼろしパンティ

34
「ひひ、そうですか、そこが大陰唇なんですね」
「うひ、勉強になるなあ」
カメラを構えながら、はしゃぐ5人組。
「では先生、その大陰唇の内側のピラピラしてるのは何と言う名前ですか」
「これは……」
「そのピンクのピラピラは?」
男達の卑猥な表現が一際まぼろしパンティを羞恥に導いている、しかしもはや逃れようは無かった。
「これは、しょ、小陰唇です」
眼をを瞑りながら必死の様子でまぼろしパンティは口にした。
その必死な様子が男達を益々喜ばせていた。
「なるほど」
「それが小陰唇ですか」

35
「先生のはピンク色で綺麗な感じですけど、他の女の人のもそんな感じですか?」
「し、知りません」
「よく聞くのは、ビラビラして黒ずんでくるらしいってんですけど、他の人はどうですか」
「た、他人のなんて見た事ありません」
意味の判らない質問と、自分の性器を観察された上で品評され、まぼろしパンティは混乱していた。
「他の人と見せ合いとかしないんですか」
「しません」
「さすがまぼろしパンティですね」
何がさすがなのかさっぱり判らなかったが、男達が調子に乗ってることは伝わってくる。
「先生」
痴面組の1人が生徒ぶって手を上げた。目の細い恵比寿顔な男だった

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「女の人のアソコには穴が2つ開いてるそうですけど詳しく教えて下さ〜い」
「そ、そんな…」
如何に抵抗しようと、今の立場では、まぼろしパンティはその質問に応えなければならなかった。
「教えてくださ〜い」
痴面組全員が合唱した。その顔は恐怖を覚えるほどの不気味な笑顔だった。
 まぼろしパンティは花唇を広げている指を持ち替え、両手の人指し指を離した。
「こ、ここが…」
意を決してまぼろしパンティが説明しようとしたところで、男達から待ったがかかった。
「ちょっとちょっと、それじゃあ全然みえないよ」
「もっと俺達が分かるようにしてくれないと」
「足を曲げて」
「腰を突き出す感じで」
先程まで興奮していて浮ついていた男達だったが、欲望は留まる事を知らず、益々貪欲にまぼろしパンティに要求してくるのだった。

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 まぼろしパンティは言われたままのポーズを取らざるを得ない。そのポーズによって確かに股間は一段とはっきりと判りやすくなってしまう。小陰唇に囲まれた一段奥まった秘密の場所がカメラの前に曝された。
「うひい、バッチリですよ」
「なんかヌメヌメしてますね」
「う〜んエロですなぁ」
「さあ先生、どうぞ、続きを」
「うぅ……」
目も当てられない程の恥ずかしい姿勢を取らされて、又まぼろしパンティは氷ついてしまう。
「ほら、早く」
「あ、あの、ここに2つの、あ、穴が開いていて…、1つが尿道口、もう1つが、ち、腟腔で……」
「ひひ、それぞれ何の為の穴なんですか?」
「尿道口は、…おしっこ、が出る穴で…」
「腟腔っていうのは?」

38
「ち、腟腔は、…その、…男性生殖器が、…挿入される」
「なんですかそれ、難しくて判りませ〜ん」
「え、あ、その…、ペ、ペニスです」
「それも判りませ〜ん」
「あ、お、オチンチン…です」
「ああ、チンポですか」
5人はわざと下品に言い直し嬉しそうにゲヘヘと笑いあった。
「場所が良く判りませ〜ん。指し示して下さいよ」
笑いながら言うのは、眉の太い三白眼の男だった。
まぼろしパンティは秘裂を広げながら、人差し指を用いて自ら恥ずかしい穴を示さねばならなかった。
「下の方にある穴が、ち、腟腔で、上の方が尿道口…、だと思います」
自信無さげに告げるまぼろしパンティ。所詮自分自身でその場所をじっくり見たことがないので、授業で習った程度の知識でしかなかった。

39
「だと思います、って何ですか」
「自分の身体のことでしょう」
「責任もってくださいよ」
偉そうなことを言う変態軍団。只単に、自分より優れている者を責め立てられるという事だけで喜びとなっているようだった。
「そこが本当に尿道口なのかどうかはっきりさせて下さいよ」
「間違った事教えられても困るんですから」
「ど、どうしろっていうの」
「簡単でしょう、おしっこしてくれればいいんですよ」
「そ、そんな」
「この場でね」
「そうすりゃすぐ分かる」
「む、無理よ」
拒むまぼろしパンティ。

40
「何が無理なんですか、小便が出なさそうなんですか?」
「それともここではやりたくないってことですか?」
「やりたくないじゃ済まされない事くらいもう分かったでしょう」
問い詰められるまぼろしパンティ。
「今は、で、出なさそうなの…」
必死にそう言った。
「そんなこと言って、ちょっとは出るでしょう」
「全く出ないなんて有り得ないですよね」
聞く耳を持たない5人組。見たい物を全部見させてもらうぞという傲慢さがはっきり伝わってくる。
「あぁ……」
「さ、見せて下さいよ、まぼろし先生」
「おしっこが出てくる所を」
「さあ」
「……」
 まぼろしパンティに逃れる術はない。実際には尿意を感じてない訳では無かった。夜風に裸身を晒し、普段冷気の当たらぬ場所まで夜の空気が触れていたので、ある程度尿意は高まっているとさえ言えた。

41
 諦念がまぼろしパンティの高貴な心を黒く覆い尽くす。腰を落とし足を広げた格好のまま、まぼろしパンティは下腹部に力を入れた。スラリと伸びていながら肉感的な太腿がフルフルと揺れる。
 5つのカメラの焦点が1点に集中する。断続的にフラッシュが光りだす。その光の中、とうとうまぼろしパンティの秘唇の奥の1点から黄金色の液体が勢い良くほとばしった。遮るものの無いままに液体はフラッシュを浴びながら一直線に放物線を描き出した。シャッターはモータードライブの様に切り続けられ、おそらく様々な角度から、動画になるほどの写真が撮られたに違いなかった。
「いやあぁ」
まぼろしパンティが小さな悲鳴を上げる。異性の、しかも変態達の前で排泄行為を曝してしまうなどと、あってはならない筈の事であった。足元には小水の水溜りが出来てしまっている。
「すげえ」
「いい物見せてもらいましたよ」
「ばっちり撮れました」
「こっちもだ、きひひ」
淫猥な感動と興奮に包まれている痴面組。勿論こんな光景を眼にすることは初めてだった。

42
 まぼろしパンティは同じ姿勢のまま動けずにいた。痴面組の1人がハンカチを差し出す。
「これで拭いていいですよ」
おかっぱ頭でおちょぼ口のカマっぽい男だった。
「…あ、ありがとう」
戸惑いながら受け取るまぼろしパンティ。自分の晒した痴態に恥らいながら濡れてしまった秘部を白いハンカチで丁寧に拭いていった。そのみじめな姿を変態達は嬉しそうに眺め、フィルムに焼き付けていく。
 拭き終わったハンカチを手にまぼろしパンティは立ち尽くす。成り行きで足は既に閉じ屈辱的な格好からは一時的に開放されていた。ハンカチをどうしようか思いあぐねていたら、元の持ち主が、さっと奪い取ってしまった。
「洗って返さなくていいですよ」
そう言ってハンカチの匂いを犬のように嗅ぎ始めた。
「いやあ、やめて」
まぼろしパンティは叫んだ。年頃の乙女として排泄を見られる事と同様もしくはそれ以上に、排泄水の匂いを嗅がれる事は耐えられない事だった。

43
「うふふ、おしっこの匂いがする。まぼろしパンティのおしっこ、うふ」
その眼は明らかに変態の眼だった。最初からこれが目的だったのは間違いが無かった。
 耐えられない程の汚辱感の中でまぼろしパンティが立ち尽くしているうちに、5人組は更なる要求を突きつける。
「素晴らしい講義ですよ、パンティ先生。でもまだ訊きたい事はあるんです」
「大切な事をまだ教わってませんでしたよ」
より一層好色で変態的な光を帯びる十の瞳。
「ズバリ訊きましょう。クリトリスは何処ですか?」
リーダー眉無しが言葉の通りひねり無しに尋ねた。動揺するまぼろしパンティ。
「取り敢えず、もう一回さっきみたいに足をおっぴろげて下さいよ」
そう言い終わると、男達の口からゲヘゲヘ気味の悪い笑い声が合唱となって響きだす。
 やっと屈辱的な姿勢から逃れられたと思っていた途端、あっという間に再び地獄行きを命じられ、まぼろしパンティを絶望感が押し潰していく。

44
「なにモタモタしてるんですか、さっきまで丸出しにしてた癖に」
「たっぷり写真にも撮られてるのに今更恥ずかしがることないでしょう」
「ションベンするとこまで見せといて、なあ」
男達の言葉がまぼろしパンティの絶望をより深くし、抵抗する気力を奪い取っていく。まだ完全に諦めてはいないまぼろしパンティではあったが、逆襲の契機の欠片すら見つけられず、言われるままに足を開いていくしかなかった。
 まぼろしパンティが足を開き、ゆっくりと腰を落として行くと、先程と同じように聖なる秘裂がはっきりと晒し出された。先程よりも幾分花唇が開いているように思われ5人は興奮を新たにシャッターを押していく。
「さっきより割れ目ちゃんが開いているみたいですねえ」
「何ででしょうなあ、でひひ」
おっさん臭い口調が興奮し、耳障りな音を出していた。
「さあ、教えて下さいよ、クリトリスの場所を」
「クリちゃん、クリちゃん」
大切な物をよこせと言う子供のような態度で痴面組の5人がカメラを構えにじり寄ってくる。

45
 まぼろしパンティは如何しようも無いまま、赤いグローブ指先で自らの秘唇を開き、小陰唇と更にその奥までをまたしても公開した。
 小陰唇をなぞるように指先を這わせ、ゆっくり頭側へと導く。左右の小陰唇の交わるポイントに来たところで指先は静止し、そこに鎮座する肉豆を指し示した。
「こ、これが、…ク、クリトリス…です」
溜息と共に、諦め切った声でまぼろしパンティは説明した。当然男達はそれだけで満足する筈もなく、要求を重ねる。
「それがクリトリスですか」
「そんな所にあるんですね」
「で、それは一体どんな役目があるんですか」
「や、役目って…」
口篭もるまぼろしパンティ。
「無駄にそんな名前が付いてる訳じゃないんでしょう?」
「そこに触れると何かが起きるとかさ」
承知の上で訊いているに違いなかった。

46
「え、その、ク、クリトリスを刺激することで、女性は、あの、せ、性的快感を得ると言われていて…」
「性的快感って何ですか?」
「気持ち良いってことですか?」
「そ、そういう解釈で良いと思います」
「まぼろし先生もですか?」
「え、あ、……」
まぼろしパンティは言葉に窮してしまう。男達は執拗だった。
「まぼろしパンティ先生も、クリトリスを刺激すると気持ち良いんですか?」
「あ、…は、はい」
答えてしまうまぼろしパンティ。
「気持ち良くなるとどうなるんですか」
「実際やって見せて下さいよ」
「クリトリスを刺激して」
「そ、そん……」
何度も繰り返された展開だった。そしてまぼろしパンティに拒む方法が無いことも全く変化が無かった。

47
「早く」
その声に促されてしまったかのように、まぼろしパンティの右人差し指が小さな陰核に伸びた。真紅の皮革に覆われた指がその禁じられた場所に触れた瞬間、電気刺激を受けたかの如くまぼろしパンティの身体がビクンと弾かれたように硬直した。
 その決定的瞬間を逃さず写真に収めていく変態達。その局部だけでなく、まぼろしパンティの表情もしっかりと捉えられていた。
「いいですねえ」
「生々しいですなあ」
「表情もよかったですよ」
「さあ、もっと続けて」
そう言われるままクリトリスを刺激するまぼろしパンティ。

48
 実のところ、まぼろしパンティにとってこの陰核の刺激は新鮮で強烈なものだった。勿論、自慰行為を全くした事が無い訳では無いまぼろしパンティであったが、久しく行っていないのも事実だった。まぼろしパンティとしての探偵活動が気付かぬままに彼女にとっての自慰行為となってしまっていた為、本来の自慰行為にまで手が回らない状態だった。つまり1年以上は確実にその行為から遠ざかっていたのが実際のところであった。しかし、その間にまぼろしパンティの肉体は目覚しいほどの成長を見せていたし、肉体に合わせて性感の方も本人の自覚とは関係なく発達してしまっていた。
「あひぃ」
まぼろしパンティが自ら肉芽を撫でる度、その口からははしたない声が漏れ出していく。

49
 以前の自慰行為によって得られたものとはまるで別種の快感がまぼろしパンティを包んでいた。アウシュビッツ・オペレーションでサタンの足の爪に受けた辱しめが影響しているのは間違いなかったし、なにより大きいのは、まぼろしパンティのコスチュームという一種の自慰行為状態に加え、その格好のままで自慰行為をすることだった。その行為が快感を倍加させているようだった。しかも他人に見られながらという状況で。しかもその他人というのが超が付くほどの不細工集団なのだから、普段とは異なった状況に置かれ、まぼろしパンティの精神状態が尋常でなくなってしまっても何の不思議もなかった。
「いやぁ」
そう叫びながらまぼろしパンティの指先は同じ場所をなぞり続けている。
「すげえ」
「ビクンビクンしてるぜ」
魅入られたように見つめつづける5人組

50
「あぁ、見ないでぇ」
「見ないでって、アンタがやめないからじゃん」
「いひひ、なんか汁気がどんどん増えてきてますよ」
「いやぁ、嘘、嘘よ」
指を動かしながらまぼろしパンティは懸命に否定する。だがどう見てもその秘奥からは後から後から淫らな水が湧き出してきていた。
「ああぁ、いやぁ」
「嫌がってないで、もっと指を早く動かして」
聴こえているのかも判らないが、指示通りにまぼろしパンティの指は更に加速していく。
「いやっ、いやあぁ」
羞恥と興奮で髪を振り乱しながらまぼろしパンティは変態達の前に痴態を晒し続けた。
「ほら、空いてる手でおっぱい揉んでみましょうか」
その声に誘導され、まぼろしパンティの左手はその豊かな胸乳に伸びていく。

51
 淡い桃色の乳頭は気付かぬ間にすっかり尖り切っていた。可憐な乳暈もふっくらと盛り上がってしまっている。すっかり敏感さが増しているその場所を真紅の左手が触れた瞬間、更なる電流がまぼろしパンティを蝕んだ。
 右手のリズムとは別のリズムで快感を告げる声がまぼろしパンティの口を衝く。
「あひぃぃ」
完璧ともいえる胸の膨らみが左側だけ歪む、まぼろしパンティ自らの手によって。
 眼前の光景の淫靡さが、痴面組の股間をこれ以上無い程熱くたぎらせていた。5人は余りの興奮で写真を撮ることすら失念していたが、眉無しリーダ−がやっとのことで我に返り一枚撮影するや否や残りの4人もこの信じられないような淫猥な光景を写真に撮り始めた。それまでの遅れを取り戻すかの勢いでフラッシュが焚かれ、まぼろしパンティの自慰姿は途切れることの無い閃光の中に晒され続けた。

52
 今、まぼろしパンティを突き動かしているのは、羞恥心であった。この姿で陰部をくつろげ、変態達の前で自慰同然の行為を披露しなければいけないという状況が、想像も出来ない羞恥心を産み出し、その抑えようとしても抑えきれない羞恥が暴発してしまっていた。そしてその羞恥心を暴発させてしまっている姿を写真に撮られてしまっている状況が更に羞恥を煽りより大きな快感の暴発を導いてしまっていた。もはやまぼろしパンティは自分自身ではこの快楽地獄から逃れられなくなってしまっていた。まぼろしパンティとして、正義感と羞恥心のせめぎ合いの狭間で悪と戦ってきている間、気付かぬうちに抑圧されてしまっていた何かが今まさに噴出してしまいそうだった。
「あぁぁ、いやあぁぁ」
口から洩れる声が快感によるものなのか嫌悪感によるものなのか自身でも判らなくなってしまっている。
「すげえ」
「信じらんねえ」
シャッターを切りながら、口を呆然と開けている痴面組5人はある種感嘆の声を上げて、この自分達が産み出した奇跡のような光景を見詰め続けた。

53
「せ、先生、クリトリスも皮を被っているそうですね」
忘我の状態から脱却したおかっぱ頭の男がおちょぼ口を震わせながら予め用意していたに違いない口調で尋ねた。
「あぁ、えぇ、そ、そうなの?」
自分自身を見失っているまぼろしパンティは質問の内容は理解していたが有効な返答は出来ずにいた。というよりもまぼろしパンティ自身が質問内容について初耳であったのだった。
「とぼけなくたっていいですよ、まぼろし先生」
「と、とぼけてなんか…いないわ……」
「先生が知らない筈ないでしょう、自分の身体の事なのに」
「ご、御免なさい、ほ、本当に知らなかったの……」
身を悶えさせながら更に恥ずかしそうにするまぼろしパンティ。
「本当なのかなあ」
いぶかしむ痴面組の男達。

54
「じゃあ、みんなでここで確認しましょうよ」
質問したおかっぱ男が提案した。
「おお、良いね、そうしよう」
同意する他の痴面組メンバー。
「ど、どう……」
戸惑うまぼろしパンティ。
「いひひ、クリちゃんのね皮を剥いてみてくれればいいんですよ」
「で、でも……」
そんな事はしたことが無かったし、事実なのかも知らないまぼろしパンティはどうすればいいのか本当に判らなかった。
「ほ、本当に、し、知らないのよ……」
「いいからいいから、とにかくクリちゃんに触って」
言われるままに動いてしまうまぼろしパンティ。自分の無知さを指摘されたようで、恥じ入りながらついつい指示に従ってしまっていた。

55
「クリちゃんが皮を被っている筈だから、それを剥く感じで」
「上だったかな、下だったかな?」
「どっちかだよ、先生の好きなほうで」
平時よりも膨らんでしまった陰核に触れたまま、まぼろしパンティは快感に耐えていた。そして意を決したかのように、陰核の表皮を頭側に向かって擦り上げた。
「ひいぃぃ」
まぼろしパンティの口から悲鳴が上がった。まるで怪我をしたかのような声だった。包皮を剥かれた陰核は信じられない程の鋭敏さだった。空気に触れただけなのに痛覚刺激にも似た感覚がまぼろしパンティを襲う。クリトリスが皮を被っていた事を身をもって実感したわけだが、一皮剥いただけでこれほどの違いがあることに恐怖にも近い感情を抱いてしまうのだった。
「ほうら、じゃあ剥き剥きしたクリちゃんに触ってみましょうか」
「…い、嫌……」
心の底から怯えた声音でまぼろしパンティは拒否反応を示す。

56
「嫌じゃすまない事位もう判っている筈ですよ、パンティ先生」
「で、でも…、む、無理よ」
「何が無理なんですか、まぼろしパンティともあろう人が」
「剥きクリちゃんに触ったことないんでしょう」
「これが初体験になるんだ、でしし」
「ほら貴重な体験ですよ、触って下さいよ」
「……あぁ…」
「怖がらなくてもいいですよ」
「きっと気持ち良いですって」
「又おしっこちびっちゃうかもね」
「…うぅぅ…」
痴面組に生殺与奪権を握られている事を思い出したかのように、まぼろしパンティはゆっくりと、恐る恐るといった動きで指先を強烈過ぎる快楽の源泉へと這わせていく。近づいていくだけで鼓動が高まるのが判った。それ程に期待感、恐怖心などの様々な感情がそこに集まっているようだった。

57
「きひいぃ」
指先が敏感すぎる肉芽に触れた途端、まぼろしパンティの口から漏れ出たのは苦痛とも快感ともとれる叫びだった。あまりの衝撃なのか息を切らし肩で呼吸しながら、凍りついてしまうまぼろしパンティ。勢いづく男達はその躊躇を許すはずが無かった。
「何やってるんですか、もっとバンバン触って」
「で、でも……」
「でもじゃないでしょう、先生」
馬鹿にされたようにそう言われ、唇を噛み締めるまぼろしパンティ。その手が再び動き出す。
「ひいぃ」
指先が軽く動いただけなのに、まぼろしパンティは高圧電流を流されたかのようにビクンビクンと大きく収縮してしまう。痴面組のメンバーは目を輝かせ正義のヒロインの演じるエロエロショーに夢中になっていた。

58
「お汁がトロトロ溢れてきてますよ」
「そのやらしい汁を指ですくって見せて下さいよ、先生」
男達は楽しそうに命令する。
 まぼろしパンティは言われるがままに、グローブの指先で自分の局部から溢れ出てくる液体を指で拭う。今までにこの場所からこんな液体を溢れさせた事の無かったまぼろしパンティは、その事実自体にショックを受けつつ、なるべく男達に動揺を気取られないように指先を突き出した。
「指先を広げて」
メンバーの1人が告げる。まぼろしパンティは口元を強張らせながら言われた通りに指を広げていく。広げた指の間をまるで蜘蛛の糸の様に、淫らな体液が橋渡されてしまった。
「うひひ、凄い粘つきですねえ」
「これ、本気汁ってやつでしょ、まぼろし先生」
「あぁ、し、知りません」
「また、知らないですか、ま、いいですけどね」

59
「じゃあ、今度はそのエッチなお汁をクリちゃんに塗りたくりましょう」
「より一層気持ち良くなると思いますよ」
「あ、ああぁ……」
この淫らな汁を陰核に塗るとどうなるのか、まぼろしパンティにはさっぱり予想がつかなかった。それが新たな恐れを彼女に植え付けていたし、今までの過程で自分の身体にまだまだ未知の快感回路が眠っていた事を暴かれてしまっていた為、この先の事態でより一層自分が乱れてしまう事を彼女は危惧していた。
 花唇の内側を指でなぞり淫水を掬い取り、震える指先で陰核に擦り付けていくまぼろしパンティ。粘つく皮膜に覆われ、陰核はより充血度を増したように感じられた。
「では、マン汁塗り塗りしながら、もう一回クリちゃんを弄ってもらえますか」
「……くっ」
逆らえぬまま、まぼろしパンティは再び変態達の前で自慰行為を行わねばならなかった。

60
「あひいぃ」
赤くてらつく肉真珠に触れる度、まぼろしパンティの全身が大きく痙攣する。だが先程とは若干その反応が異なっていた。表面を覆う愛液が丁度良い緩衝材となり、痛みを伴う程の刺激から純粋な快感だけが引き出されたようだった。
「あうぅん」
苦痛は取り除かれ、より大きな快感のみがまぼろしパンティの芸術品のような肉体を支配していく。それまで感じたことの無い感覚の嵐に晒されまぼろしパンティの自制心は次第に薄らいでいってしまうのだった。
「あ、あっあぁん」
まぼろしパンティの左右の指先の動きはより活発になり、もはや彼女の意志を無視して加速しているようだった。そしてそれにつれて、深くくびれたまぼろしパンティの腰が反射的にくねり始めるのだった。その腰の動きが、まぼろしパンティの意志は全く望んでないにも関わらず、卑猥な空気を更に生み出すことに貢献してしまっていた。
「ひいぃぃ、駄目えぇぇ」
まぼろしパンティは訳の判らぬ叫びを上げ始めだしてしまう

61
「何が駄目なんですか、まぼろし先生」
興奮しながらも興味津々で尋ねる変態達。
「駄目なの、このままじゃ、ああぁぁ」
指先を止められず快楽に振り回されながら叫ぶまぼろしパンティ。
「駄目じゃないですよ、気持ち良いんでしょ、先生」
「イっちゃうんでしょ、パンティ先生」
卑猥な笑い顔で男達は問い掛ける。
「……判らないわ、判らないの、あぅぅ」
まぼろしパンティは追い詰められていた。友人などとの会話により、エクスタシ−というものの存在とそれがどういったものであるかはある程度理解していた。しかしかつての自慰行為では言われているほどの快感の高みを感じることはなかった。だが自分を今襲っている快感が辿り着く先は間違いなく“絶頂”と呼ばれるものであろうことは自分自身が痛いほど判ってしまっていた。しかし、それをこの変態5人組に告げられる筈もなく、またそんな姿を晒さぬ為にも必死で快感を抑え込もうとしていたのだった。けれどその快感を生み出しているのは他ならぬ自分自身の指であり、自分自身の羞恥心であって、自家中毒に陥ってる彼女にもはや自分を止められる力はなかった。

62
「またまた、誤魔化さなくて良いんですよ」
「イクとこ見せて下さいよ、先生」
「イクって言いながらですよ、パンティ先生」
「あぁぁ、いやあぁぁ」
まぼろしパンティの腰は一層激しくうねり、豊乳は両方とも真紅のグローブで揉みしだかれている。下半身に伸びた指も勢いを増し、花唇は充血して口を開き内側より大量の淫水を散らしていた。
「駄目ぇ、駄目よ、ひいぃぃ」
自らの指が産み出す汁気を帯びた恥音が羞恥を益々掻き立てる。
「イキそうなんでしょ、素直になりなって」
「しっかり撮ってあげますから」
「いやあぁ、駄目えぇ」
動きは激しさをまし、限界が近いことは明らかであった。

63
「イクって言ってみ、先生」
「ひいぃぃ」
まぼろしパンティの身体が痙攀するように震えは始めた。
「いやあぁぁ、駄目えぇぇぇ、イ、イっちゃうぅぅぅ」
身体の震えが大きくなり、コントロールが出来ずに脱力したかのような動きが増えていく。言わされているというよりは、その言葉がこの場で最も適した表現なのだといわんばかりに、まぼろしパンティは気持ちの昂ぶりを言葉にした。そして遂に来てはならない地獄の絶頂がまぼろしパンティにやってきてしまった。
「ひいぃぃ、イ、イクうぅぅぅぅ」
絶叫と共にまぼろしパンティの芸術的な肉体は一瞬で硬直した。この夜最高の数フラッシュが一斉にその決定的瞬間の為に焚かれた。陰影が浮かばぬ程あらゆる角度からの閃光を浴びまぼろしパンティの絶頂姿が闇にくっきりと浮かび上がっていた。

64
 硬直はすぐに緩み、思い出したかのようにビクリビクリと美しい身体が跳ね、その反動のように脱力感がまぼろしパンティを包み込む。足にも力が入らず、弛緩したまま地面に倒れこんでしまう。横座りから上体を投げ出す形で男達の前に無防備な寝姿を晒すまぼろしパンティ。上気した顔貌や紅潮した肌、鋭敏そうに脹れた胸乳やたっぷりと蜜を含んだ秘所などを執拗にカメラに収めていく痴面組の面々。乱れた息遣いやある種満足感の漂う空気すらもフィルムに焼き付けられそうであった。
 脱力状態から徐々に回復してきたまぼろしパンティの周囲を5人の変態が取り囲んでいた。恐怖の表情を浮かべ5人の顔を見回すまぼろしパンティ。変態達の前で全裸姿を無防備に晒してしまっているのだ、この後のことに思いを馳せれば恐怖におののくのも無理はなかった。
「いひひ、素敵な格好ですよ、まぼろし先生」
「そろそろ今夜のメインイベントと参りましょうか、でひひ」
「メ、メインイベント……」
見当が付いているにも関わらず、そう尋ねるしかないまぼろしパンティだった。
「そう、まぼろしパンティ先生による本番性教育ですよ」

65
「僕等全員に丁寧に指導して頂きますよ。げへへへ」
彼等の目的は最初から決まっていたのだった。透視カメラの実用化に成功して標的をまぼろしパンティに定めた時から、最終目的はまぼろしパンティの身体での童貞喪失だった。まぼろしパンティの正体を暴くことは二の次で、その身体を自由に出来ることが重要だった。彼等は信じられない程の不細工であったから、女性と交際した事など無く、当然それ以上の深い交わりなども持てる筈がなかった。つまり5人揃って童貞なのだった。
「む、無理よ、そんなこと」
叫ぶように声を絞り出すまぼろしパンティ。
「何が無理ですか、そんなスケベな身体して」
「5人くらい相手にするのは楽勝でしょう」
「この年まで童貞な可哀想な僕達に手取り足取り教えて下さいよ」
「S、E、X、の全てを。きひひひひ」
「そ、そんなこと出来ないのよ、だって……」
泣き出しそうな声でまぼろしパンティは語り、声を詰まらせた。男達も黙ったまままぼろしパンティの言葉の先を待った。

66
「わ、私も、け、経験……無いの」
恥ずかしそうに顔を背けるまぼろしパンティ。まぼろしパンティとして活躍しながらその手の経験が無いというのは彼女にとってある意味恥ずべき事として捉えられていた。
 突然の告白を聞かされ戸惑う痴面組メンバー。彼等にとっては俄には信じられないことだった。
「経験無いって、その……」
「バ、バージン……なの」
「またまた、騙そうったってそうはいきませんよ」
「そんなエロエロな体の癖に」
「嘘じゃないわ、ほ、本当に、その…しょ、処女なのよ」
疑わしそうな目付きで痴面組の1人が尋ねる。
「ランジェリーマスクっていう痴女もアンタだったんでしょ、知ってますよ」
「そうだ、あんな事してた女が処女だなんて信じられませんね」
「あ、あれは特訓だったのよ、淫らさを身につける為の……」
「そんな事言って、もしアンタがバージンじゃなかったらどうするんですか」
「ほ、本当にバージンなのよ」
強い口調で訴えるまぼろしパンティ。言葉の端に乙女としてのプライドが滲んでいた。

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「もしバージンじゃなかったら、この身体を永遠に貴方達の好きにして良いわ」
その言葉に目を見張り顔を見合わす痴面組のメンバー。
「それは俺達の永久奴隷になるって言ってるのと同じですよ」
「もし私が処女じゃなかったら、それでも構わないって言ってるの」
その強い決意に満ちた台詞に5人はたじろいだ。再び顔を見合わせる変態達。
「お、おい…」
「本当みたい…だな」
その瞬間5人の頭の中を1つの思いが駆け巡る。彼等の今後の人生で処女と性交出来る可能性は皆無に等しいであろう事は火を見るよりも明らかだった。どんなに悪どいことを企んだとしても確率は大きく変わらないだろう。しかも、まぼろしパンティのような極上の肉体を合わせ持った処女などと手合わせ願える機会などこの先あるとはとても思えなかった。そう、これが生涯で最初で最後の運命的なチャンスであることはは5人それぞれにとって間違い無かった。そしてそれぞれこの機会を何とかものにしようとした瞬間がたった今訪れたのだった。

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「で、ではその確認作業をリーダーであるこの僕ちゃんが……」
眉無しのリーダーが上擦った声を上げた。途端に他の4人から非難が湧き出る。
「いやいやここは俺が」
「カメラの開発者である僕に当然権利がある筈です」
「今回の計画は殆ど俺のものだ、俺が一番に」
「標的を定めたのは僕ですよ」
それぞれが自己主張を始めるのだった。当初の計画では、順番に思いを遂げていこうという段取りだったのだが、今や全員そんな事は意識の外だった。それ程までにまぼろしパンティの処女という御馳走は何にも替え難い輝きを放っているのだった。
「まずはリーダーが……」
「ふざけるな、そんなの関係ねえ、威張るな無能」
「な、何、貴様等こそ無能な変態じゃないか」
「うるさいよ」
「何を」
「やる気か」
「上等だ」

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変態同士の醜い言い争いはとうとう掴み合いに発展し、そのまま殴り合いに雪崩れ込んだ。戦闘能力など無いに等しい痴面組メンバーであるから、その戦いは低レベルで目も当てられないひどいものだった。子供のような殴り合いが延々と続き、1人又1人と倒されていく駄目駄目バトルロワイヤルだった。そして遂に最後に残った2人が揃って倒れるダブルノックダウンで幕は閉じられた。
 事の成り行きを呆れ顔で見守っていたまぼろしパンティは変態5人が全員意識を失い倒れている光景を目の前にし我に返った。5人全てのカメラを奪い去り、変態達を縛りつけると、自らのパンティも奪還し、火照った身体を持て余しつつ現場を後にした。
 その後まぼろしパンティの通報により痴面組は警察に逮捕され、クライム学園を放校処分となった。

 現像に出せぬ押収フィルムを抱えながらまぼろしパンティが自慰行為に及んでいるかどうかは彼女だけしか知らぬ秘密である。

<完>

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