まぼろしパンティ・海賊版・「我が愛しきパンティよの巻」前編/中円寺・著



 N県にある進学校、クライム学園。アウシュビッツ・オペレーションと呼ばれた最悪の仕置き刑が発動された翌日より、
学園を牛耳っていた学園長及びその取巻きの仕置き教師は忽然と姿を消し、学園に平穏が訪れた。
 学園内の犯罪や、学園長の魔の手から生徒達を守っていた仮面の探偵まぼろしパンティも同時に姿を現さなくなった。
生徒達を苦しめる事件が発生しなくなったのだから当然といえば当然であり、喜ぶべき事態ではあった。
 しかし平和は1ヶ月しかもたなかった。枷が無くなった為にクライム学園は再び犯罪多発学園へと逆戻りしてしまったのだった。
そしてまぼろしパンティは復活した。以前よりも一層華麗に、そしてセクシーになって正義のヒロインは学園に再び戻ってきた。

 まぼろしパンティが復活してから1ヶ月ほど経ったある日、クライム学園のありとあらゆる掲示板に怪文書が掲示されていた。
廊下や階段などあらゆるところに掲示されていたこともあり、あっという間に怪文書の存在は全校生徒及び全職員の知るところとなった。
 怪文書にはこう書かれていた

『   予告
 この学園で最も有名なパンティを頂戴に参上する
                      ルパンティ三世 』


 ルパンティ三世は怪盗ルパンティの三代目を名乗り、女性の下着ばかりを狙う泥棒として名を馳せていた。
勿論その名はクライム学園の教師や生徒達にも轟いている。
 まぼろしパンティこと藤寿々美もルパンティ三世の予告状を掲示板で確認した。この学園で最も有名なパンティと言えば、
まぼろしパンティのパンティ、それもマスクパンティを指しているに違いないと寿々美は確信していた。
掲示板を囲む人だかりの中からも当然のようにそうした指摘が漏れ聴こえてくる。
この学園でパンティと言えばまぼろしパンティが真っ先に浮かぶのは誰に訊いても自明のことであった。
 寿々美は対処法について頭を悩まさざるを得なかった。マスクパンティを盗まれると言う事は、まぼろしパンティの正体がばれる、
もしくは既にばれているという事に他ならなかった。

 どうすればいいのか。まず考えたのはしばらくの間まぼろしパンティとしての活動を控えることだった。
しかしいつまでに盗むというような期限が切られていない為、下手をしたらこの先延々とまぼろしパンティとして活躍できなくなってしまう可能性もあった。
それにプライドの問題もある。
そんないかがわしい泥棒に怖気づき姿を見せなくなったと思われるのは今まで羞恥を堪えて学園の為生徒皆の為に活躍してきたという自負のある身には許せる筈も無かった。

 ではどうするか、相手は一応名の知れた泥棒である。それなりの技術をもっているのは間違いない。対してこちらは、一回たりとて負ける訳にはいかない立場にある。
負けること、即ちパンティを奪われることはまぼろしパンティとしての終わり及び藤寿々美としての終わりを意味していた。
 じっと待っているよりは、こちらから攻勢に出たほうが良い。寿々美はそう判断した。
罠を仕掛けて誘き出し、逆に捕まえてやるのだ。
 寿々美は早速警察署長をしている父親に電話で相談した。そもそも寿々美がまぼろしパンティとして活動を始めたのは父を助ける為であったし、
既に父は寿々美がまぼろしパンティであることを知っていたので遠慮気兼ね無く話を持ちかけることができた。
 父親の藤警部が言うにはS県警にルパンティ三世を長年追い続けている警部がいるらしいとの事だった。
いつも良いところまでは追い詰めるのだが結局最後はルパンティ三世にまんまと逃げられてしまってばかりいるということだった。
だがルパンティ三世に関してはその警部が誰よりも詳しいので相談するなら彼しかいないだろうと藤警部は言うのだ。
至急その警部に連絡を取ってみると藤警部は約束し電話は切れた。

 予告状が張り出された翌日、クライム学園に一人の男がやって来た。男は警察の者である事を告げ、まぼろしパンティに逢わせて欲しいと頼み込んだ。
学校関係者が、自分たちの側からはまぼろしパンティに連絡を取る手段が無いことを説明しても、その男は諦めなかった。
まぼろしパンティが姿を現すまで待たせてもらうと云って勝手に校舎内をうろつき始めた。
 男は張形警部と名乗った。国際刑事警察機構とも関わりがあること等を仄めかしつつ、ルパンティ三世を長年追っていることを自慢げに語っていた。
黄土色のトレンチコートを着て、頭にはコートと同系色の中折れ帽子を被っていた。厳つい顎や意志の強そうな眼光はいかにも叩き上げの刑事といった風貌である。
寿々美の父親よりは若干年上のようだったが、威厳のようなものは歳の差以上にあるように感じられた。
 張形警部は、まぼろしパンティが現れるまで学内に留まる気のようで、まぼろしパンティと面会がしたいという主旨の文面が書かれた張り紙を
一番目立つ中央の掲示板に張り出すと、校舎の屋上にテントや寝袋を持ち込み、泊り込む準備を整えた。
 現職の刑事、しかも必要以上に厳めしい風貌の男が学内をうろついていることで、学内の治安は信じられないほど良くなったような雰囲気だった。
放課後になると、からかい半分で警部の様子を窺いに来る生徒達が多く見られたが、気安く声を掛けられるような雰囲気はまるで無く、
目が合った途端に退散する者達ばかりだった。

 張形警部が屋上に泊り込み、全てが寝静まった時刻に1つの影が校舎の屋上に降り立った。
影は警部の眠っているテントを目指しゆっくりと歩を進めた。テントの前まで来ると穏やかな声で警部を呼んだ。
「張形警部、起きていらっしゃいますか」
一拍間が開いた後でテントの中が慌しくなり、張形警部が寝乱れた頭のまま顔を出した。
「あ、あんたは…」
警部は動揺を隠せぬままテントの前に立つ影に尋ねた。
「お休みのところ申し訳ありません。これくらいの時間のほうが人目に付かなくて良いかと思いまして」
影の人物は姿勢を崩さぬまま非礼を詫びた。
「い、いやいや、こちらこそ」
警部はそう云いながらテントから這い出す。ようやく影の人物の様子が判別出来るようになってきた。
 影の人物は殆ど衣類を身に付けていなかった。辛うじて下半身は女性用の下着で覆われていたが、その他の部位は全く隠されていなかった。
足は真紅のロングブーツを履き、手も統一感のあるロンググローブを填めてはいたが、本来女性であれば隠すであろう体幹部分は丸出しの状態だった。
そして顔面は覆面で隠されていた。よく見るとその覆面は女性用の下着であることが判る。この人物こそ張形警部が探していた人物に間違いなかった。
「あんたが、まぼろしパンティさんなのかい」
警部は確かめるように問い掛ける。
「ええ、私がまぼろしパンティです」
夜の校舎の上で、その声は高らかに響いた。
「話に聞いた通りだな、本当にその格好で探偵活動してるのか」
「ええそうです、何か御不満でも」
「い、いや、だが、若い娘さんが何もそんな格好で…」
警部は気圧されたように口篭もった。
「学園内の正義を守る為です、このスタイルに正義の意志が込められているのです」
「そ、そうかい、まあ本人が良いなら構わないんだが…」
警部はまぼろしパンティから目を逸らせると今回の件について語り始めた。
「あんたをこの目で見たことで確信したよ、ルパンティ三世の奴が狙っているのがあんたのマスクに間違いないってことを」
警部はそう云った。まぼろしパンティも同意するかのように強く頷いた。
「あいつは無類のパンティ好きでな、世界中のパンティを盗み出すことを生き甲斐にしていると言っても良いだろう。
しかもそのパンティは使用済みでなくてはならんらしい、あんなのと同じ種族であること自体が恥だ」
そこで警部は一瞬まぼろしパンティの肢体を眺め、すぐに視線を逸らせて話を続けた。
「とにかく三度の飯よりパンティが好きっていうような男だからな、あんたの噂を聞いて堪らなくなったのだろう。
なにしろあんたときたら身に付けてるものはパンティだけっていうんだから、ルパンティ三世の奴とある意味で趣味がぴったりあってるとも云えるじゃないか」
警部のその言葉をまぼろしパンティは微動だにせず聞いていた。
どういった感情が浮かんでいるのか張形警部からは窺い知れなかった。警部は続ける。
「おそらくこの世で一番盗まれたくないパンティがあるとすれば、それはあんたの覆面のパンティに違いない。
そしてそういうパンティを狙うことに人生を賭けている男がルパンティ三世って訳だ。ある意味今回の件は必然的な巡り合わせだったのかもしれん」
 張形警部は一拍間をとり、まぼろしパンティの様子を再び窺った。
まぼろしパンティは先を急かすように警部の顔から視線を逸らさない。警部は話を続けた。
「そこで儂は、作戦を考えてきた。いつもなら大人数を配置して厳重な警備をするところだが、今回は対象があんたということもありそういう訳にもいかん、
だから今回は囮捜査に近い遣り方でいこうかと考えている」
「囮捜査?」
まぼろしパンティはその言葉の意味するところが判らないといった様子で声を発した。
「まあ、囮捜査というか、言うなれば罠だな、罠を仕掛けて奴を捕まえるんだ」
警部は自身満々に語った。
「罠って、具体的には何をするんです」
「奴が狙っているのはあんたのマスクだ。そして奴はプライドが高い。手に入れるのが困難になればなるほどやる気が出てくるようなタイプだ。
欲しい物の為なら罠と判っていても飛び込んでくる、そういう男だ」
長年ルパンティ三世を追っているだけあって警部の言葉には重みがあった。
「あんたのマスクを隠すのではなく、敢えて目に付くように展示するんだ。そうすればルパンティの奴はやって来ざるを得なくなる。
ゴキブリホイホイに引き寄せられるゴキブリのようにな」
「展示するって、このマスクを?ケースか何かに入れて?」
まぼろしパンティは驚いたような声を上げた。
「そう、まず最初に考えたのはそれだ、そのマスクだけをケースに入れて飾って置く。だがしかしそれでは奴が飛びつく可能性が低い。
そのパンティが本物かどうか証明のしようがないからな。だからマスクだけというのは現実的ではない。やはり罠にする為には被った状態のままでないといかん」
「被ったままって、私ごとってことですか」
まぼろしパンティは信じられないといった様子をみせる。
「そうだ、奴を誘い出すにはそれが一番有効なんだ。頼む、この計画に乗ってくれ」
警部は土下座をして頼み込んだ。まぼろしパンティは慌ててそれを止め先を促した。
「詳しい話を聞かせて下さい、決めるのはそれからにさせて頂きます」
「そりゃあそうだ。早速だが、これを見てくれ」
警部はそう言ってテントからダンボール箱を引っ張り出してきた。かなりの大きさだがそれほど重そうではない。
警部が箱を開けると、中には金魚鉢のような透明な球体と、金属製のテーブルのパーツのような物が入っていた。
警部は中身を丁寧に取り出し、組み立て始めた。
出来上がってみればそれは本当に黒い金属製のテーブルの上に透明な半球が載っているといっただけのシンプルなものだった。
「これが今回の為に用意した道具だ、見ての通り簡単な代物だが奴を引っ張り出すにはこれが一番だ。使い方は簡単、机の下に潜り込みこの透明の球に頭を出す。
そしてルパンティ三世の奴が現れるのを待つ。現れたところで儂が飛び出し逮捕って筋書きだ」
「それだけ、ですか…」
まぼろしパンティは自信満々な警部の作戦のお粗末なことに呆れていた。
「それだけとはなんだ。必要にして充分だ。これ以上複雑な作戦では奴に裏をかかれる可能性を高めるだけというのが判らんのか」
「それにしても…」
「勿論それだけではない、あんたの手元にあたる所には催涙ガス噴射装置のスイッチが付いている。
奴が近づいてきたらそれを押せば儂の手が無くともあんただけでルパンティの奴を捕まえることもできる」
「はあ…」
今ひとつ張形警部を信用しきれてなかったまぼろしパンティだが、警部を頼らずとも自分の力だけでルパンティ三世を捕縛できそうなことが判明したことで
少しだけこの作戦に乗っても良いかと考え始めていた。
「既に、待ち伏せる場所は目星を付けてある。校内を見回って最も適した場所を見つけておいた。学校側の許可も取ってある。今から行ってみようじゃないか」
警部はそう云って道具をまとめ歩き出した。
まぼろしパンティはあまり乗り気ではないようだったが、勢いに負け警部に従った。

「何処なのです、その場所は」
まぼろしパンティは夜の校舎を警部の後ろを歩きながら尋ねた。その間も周囲に対する警戒は怠っていない。
「視聴覚室だ」
「視聴覚室…」
説明を受け、まぼろしパンティは理解した。
確かに視聴覚室ならば窓は1つだけしかなく、完全防音である、進入経路は限定され警備のしやすさでいえば構内でも1、2を争うであろう。
それでいて地下の仕置き室に比べれば隙があり全く侵入出来ないという訳でもない。
なるほど良い所に目をつけるとまぼろしパンティは張形警部を見直していた。

<続く>

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